【賃貸リフォーム&リノベーションを考える】値上げラッシュの中の賃貸リフォーム

今回は賃貸のリフォーム事例ではなく、建築資材の高騰によって、賃貸の現場で工事費用が上がっている、という事態を考察します。
本年4月から国民生活に関わる多くの品目の価格が上昇していて、所得が増えていない世帯を直撃する値上げラッシュとなっています。それは一般品目だけでなく、賃貸経営を直撃する値上げも起こっています。昨年3月頃から始まったウッドショックで日本の木材輸入価格が前年末比69%上昇しました(昨年9月時点、経産省のHPより)。原因は、新型コロナによるロックダウンで住宅建設が落ち込んだアメリカなどが、解除後に莫大な財政出動と住宅ローンの低金利政策を実施したことで、郊外の住宅建設やリフォームが増加したことです。そこにコンテナ不足と海上輸送の混乱による物流コストの上昇が拍車をかけました。このウッドショックは、そのまま高止まりして元の水準に戻る見通しは立っていません。「コロナ禍以前の価格には戻らない可能性も」との予測もあるようです。

原状回復工事に影響する値上がりも

賃貸経営に影響する価格の上昇もあります。まず、借主の退去ごとに行われる原状回復工事に必須の壁材などは、代表メーカーであるサンゲツやリリカラが、昨年9月に13%~20%の値上げをしました。さらに本年(2022年)3月と4月には第2次となる18%~25%の値上げを実施しています。昨年9月の値上げ前と比べて通算で3割から最大で5割増しという計算になります。両社とも値上げの理由として、塩ビ・可塑剤・ナイロン・ポリエステル等の主要原材料価格の高騰、原油価格及びナフサ価格の高騰、物流コストの上昇などを挙げています。実際に現場ではクロス、CF、塩ビタイルなどすべての価格が上がっていて、ほぼ職人さんの人工(にんく)のみで行える清掃等以外は軒並みのアップとなっています。仮にクロスの材料費が4万円の現場では、1万2千円~2万円のコストアップという計算になります。

賃貸住宅で使われる住宅設備も同様に

賃貸住宅のキッチン、バスルーム、洗面化粧台、トイレなどの住宅設備には耐用年数があり、それを過ぎたら入れ替えを検討されることもあると思いますが、それらの価格はどうでしょうか︖ こちらも同様にパナソニックでは本年8月から6%~12%、TOTOは本年10月から2%~20%、LIXIL(リクシル)も4月から2%~39%の値上げを発表しています。設備は1点の価格が大きいだけに負担も大きくなります。さらに品不足も重なっていて、給湯器が入ってこない現場が多数あって完工できずに困っている、という話をよく聞きます(2022年4月時点)。

コストアップを転嫁できない賃貸経営

スーパーのような業態なら、仕入れ価格の高騰を売価に反映させることは普通に行われますし、飲食店や食品メーカーなども、企業努力の限界を超えたら原価アップをメニュー価格に転嫁することは容認されています。しかし、賃貸経営では工事費等のアップをそのまま家賃に反映させるのが難しいので、そこが苦しいところだと思います。「入居者確保という売り上げを維持しながら経費増を防ぐ努力」が必要になります。簡単ではありませんが、そのような意識をさらに強く持つことが要求されるようになりました。では、どのようにしていけばよいのでしょうか︖

さらにローコストリフォームの意識を

入居者確保の原則として退去をなるべく防ぐ、という方針は重要です。これは同時に工事費アップ対策になることに気づかされます。しかし防げない退去があるのも現実ですので、その際には、「必要な工事は行う、無駄な工事は省く」という方針を再度徹底する必要があります。例えば経年劣化が目立つクロスを、経費節約のために張り替えずに賃貸すると、空室の長期化や家賃の値下げという収入減リスクになりますので、これは必要な工事にあたると思います。一方で、いままで使っていた廃盤になりにくい量産クロスを、単価はアップするけど寿命の長い素材を選ぶことで張り替えの頻度を減らし、長期的に費用を抑えるという工夫も考えられます。洗えるクロスというのもありますし、張り替えないで塗装するという選択もあります。キッチン、バスルーム、洗面化粧台なども、見た目が古びたけど機能に問題がないなら、入れ替えではなく表層だけ張り替えることで費用を抑えることができます。これらの方法を特におススメする、ということではなく、工夫の余地があることをお伝えしたいのです。大事なのは、リフォーム工事費が高騰することを知ったうえで、それに備えることです。ローコストリフォームへの意識がさらに重要になってきました。