「令和5年度税制改正大網」による相続税・贈与税の改正ポイント

令和4年12月16日に公表された「令和5年度税制改正大綱」の中から相続税・贈与税に関する改正について解説いたします。

令和5年度税制改正大網の改正5ポイント

令和5年度税制改正大網では、相続税・贈与税について5つの改正ポイントがあります。

  • 生前贈与加算の対象期間が延長
  • 相続時精算課税制度の見直し
  • 教育資金・結婚・子育て資金の一括贈与に関する贈与税
  • 空き家にかかる譲渡所得3,000万円控除の見直し
  • マンションの相続税評価

5つのポイントの中で、相続に関する「相続時精算課税制度の見直し」「生前贈与(暦年贈与)の加算期間延長」について、詳しく説明します。

相続時精算課税制度の拡充

相続時精算課税制度(以下、精算課税)とは、以下のものです。

相続時精算課税の制度とは、、原則として60歳以上の父母または祖父母などから、18歳(注1)以上の子または孫などに対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。この制度を選択する場合には、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があります。
引用:国税庁|No.4103 相続時精算課税の選択

60歳以上の父母又は祖父母から、贈与者の推定相続人である18歳以上の子又は孫に贈与した場合に、累計で2,500万円までは贈与税の負担額なく贈与できる制度です。

2,500万円を超える部分については、一律20%の贈与税を納付します。

ただし、贈与者である父母または祖父母などが亡くなった時は、贈与財産の価額を相続財産に加算して相続税額を計算しなければなりません(すでに納付済みの贈与税額は相続税額から控除されます)。

原則として相続税の負担軽減にはならないと言われ、あまり普及していませんでしたが、この点が改正されます。

相続時精算課税制度の改正内容

現在の累計で2,500万円という基礎控除額とは別に、毎年課税価格から110万円を控除することができるようになります。

この分は申告も不要で、将来の相続財産への加算も必要ありません。

年間110円万以下の贈与であれば、暦年贈与より精算課税を選択した方が有利になります。

また贈与財産が不動産の場合、贈与の日から贈与者の相続税の申告期限までの間に災害によって一定の被害を受けた場合は、相続税の課税価格に加算される不動産の価額は、贈与時の価額から被害を受けた部分に相当する額を控除した残額とされることとなりました。

暦年贈与の加算期間延長

暦年贈与は増税となります。

相続、遺贈などによって財産を取得した人が、被相続人からその相続開始前3年以内に暦年贈与によって取得した財産があるときには、その相続税の課税価格に贈与を受けた財産(贈与時の価額)を加算する必要がありますが、その期間が3年から7年に延長されます。

ただし、7年間の贈与全額が加算対象になるわけではなく、4年から7年の贈与財産の合計額から100万円を控除した残額を加算することとなりました。

ともに2024年1月1日以降に贈与する場合について適用されます。

精算課税と暦年贈与のどちらを選べばいい︖

精算課税には、暦年贈与のメリットである年間110万円の非課税枠が追加され、暦年贈与のような7年という加算期間はありません。

累計2500万円(年110万円を除く)という基礎控除もあります。

しかし、暦年贈与の方が、相続税・贈与税の総額が抑えられるケースもあります。

贈与したい資産の総額が大きく、毎年110万円ずつでは時間がかかりすぎる場合です。

毎年500万円を18歳以上の子に10年間にわたって贈与を続け、その時点で相続が発生したときの、精算課税と暦年贈与を比較すると図のようになります。

両制度ともに10年間で500万円ずつ計5,000万円を贈与しました。

しかし相続財産に加算されるのは5,000万円のうち、精算課税では3,900万円、暦年贈与では3,400万円となります。

それぞれが10年間で支払った贈与税は、精算課税では全額、暦年課税では7年分までが相続税から控除されます。

さらに贈与する資産額が高くなり、贈与期間が長くなれば、暦年贈与の方が有利になることが分かります。

このように「相続人の数、資産の総額、贈与の年数」によって変わります。

以上が「令和5年度税制改正大綱」で示された相続税・贈与税に関する改正についての解説です。

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