【弁護士による賃貸法律相談室】ペット可契約でも損害賠償請求事例

店長の恋水です。通常、退去時の賃借人は経年変化や通常使用による損耗について責任を負いません。なぜなら、これらの修繕費用は賃料に含まれると見なされるからです。しかし、ペット飼育が許可される賃貸物件では、ペットによる傷や臭い、汚れにより通常よりも劣化が進みやすくなります。このような場合、特にペットによる損耗は通常損耗と見なされるのか、それとも特別損耗と見なされるのかが問題となります。裁判例では、基本的に以下の考え方が示されています。

・賃料設定がペットを飼うことを許容したことで、通常より高額に設定されていた場合は通常損耗
・そうでない場合、ペットを飼育していたために、賃貸物件の使用で通常に生ずる傷や汚損を超えて損耗が生じた場合は特別損耗

通常、特別損耗と通常損耗を判断する際には、賃料の設定が重要な基準とされます。例えば、東京地方裁判所の判例では、賃料が特に高額でない場合においても、ペット飼育による損耗が特別損耗と判断されることがあります。その具体例として、築17年の3階建ての賃貸アパートが挙げられます。このアパートでは、契約書に猫1匹の飼育が許可され、内装の破損については修理費用の負担が規定されていました。賃借人が12年以上滞在した後、退去時にはフローリングの一部に腐食や毀損が見られ、賃貸人は全面張り替えや床根の補修の費用を請求しました。しかし、賃借人は経年劣化や通常損耗と主張して支払いを拒否しました。裁判所は、この事案についてどのような判断を下したのでしょうか。

「賃借人は、貸室で猫の飼育を認められていた一方で、その飼育に伴い室内に損傷等を生じさせることのないよう善管注意義務を負っていて、その義務の程度が緩和されるべき事情は認められない」

と述べて、ペット飼育に起因する傷や汚損は特別損耗として賃借人の費用負担を認めています。一方で、この工事費用の負担割合について裁判所は

「フローリング工事に係る費用については、その30%の額を賃借人の負担とするのが相当である」

と判断しました。理由として4点を挙げています。

・ローリングの全面張り替え工事には,新築後約17年における経年変化や通常損耗に係る部分を修復する工事が必然的に含まれており、賃貸人はその分過剰に利益を受けているといえる。
・証拠上認定できるフローリングの損傷部位は、あくまで一部にとどまり、その余の部分について通常の使用による損耗の程度を超える損耗が生じていたと認めるに足りない。
・したがって、その部分補修でなく、居室の全体につきフローリングの張り替えを行ったことが、可能な限り毀損部分に限定された工事であると認めるに足りず、この点で賃貸人は過剰な利益を受けているといわざるを得ない。
・他方で、腐食した床根の補修については、賃貸人が過剰な利益を受けたとまではいえない

の事例では、その他、居室ドア縁、巾木、居室石膏ボードについても、猫の爪研ぎによる破損等が生じていることを特別損耗と認めつつ、上記で述べた事情を個別に考慮して、賃借人の費用負担割合をそれぞれ、居室ドア縁(20%)、巾木(25%)、居室石膏ボード(50%)と認定しています。以上のように、ペット飼育による傷・汚損等が特別損耗と認められた場合でも、

・新築時(またはリフォーム時)からどの程度の年数が経過していたか
・全面張替(交換)工事を行った場合、傷・汚損が生じていた部分が全体のうちのどの程度の割合 だったか

という点を考慮して工事費用の負担が決められることを示した裁判例と言えます。

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