
こんにちは!KOBE(神戸)売却ナビの恋水です。
2024年、東京都板橋区の築古賃貸マンションで発生した「家賃2.5倍値上げ通告事件」は、賃貸業界に大きな衝撃を与えました。
中国系企業オーナーが、家賃を月額7万2500円から17万5000円へと強引に引き上げた上、エレベーターの停止などの強硬策に出たこの件では、住民の約4割が退去または退去を決意。
さらに、当該物件では無許可での民泊利用も発覚し、メディアでも連日取り上げられる事態となりました。
この事件は単なる“トラブル”ではなく、「これからの不動産売却・投資・管理におけるリスク」と「売主・仲介業者としての責任」を改めて突きつけるものとなっています。
家賃2.5倍が成立しない理由──日本の法制度と実務
日本の【借地借家法】は、借主を強く保護する法律です。家賃の値上げには、以下のような要件を満たし、社会的にも「相当」と認められる必要があります。
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固定資産税等の税金の上昇
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土地や建物価格の変動
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周辺の家賃水準との比較
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経済事情(インフレ等)の変動
今回のような一気に2.5倍というような値上げは、上記のいずれにも該当せず、裁判でもほぼ確実に退けられるであろう「違法レベルの値上げ」と言えます。
さらに、日本では正当な理由がなければ、借主の更新拒否や退去要請もできません。つまり、賃借人の権利は法的にも非常に守られているのです。
海外の実情──世界でも「暴走値上げ」は例外的
一部の報道やSNSでは、「海外では大幅値上げは当たり前」といった誤解も見られましたが、これは事実とは異なります。
実際には、次のように多くの国・都市で家賃上昇率には制限があります。
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アメリカ・ニューヨーク市:年2.75%程度が上限
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カリフォルニア州:年5%+インフレ率、または10%未満
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ドイツ:3年間で20%超の値上げは禁止
つまり、今回のような「2.5倍」という上げ幅は、世界的に見ても明らかに異常なケースであり、制度の誤解による“素人オーナーの暴走”と言えるでしょう。
.外国人投資家の増加と物件売却時のリスク
円安と低金利の影響により、近年日本では外国人投資家による不動産購入が急増しています。
築古でも好立地であれば、キャッシュで一括購入する外国企業や個人も多く、オーナーの高齢化・相続などをきっかけに売却するケースとのマッチングが進んでいます。
しかし、ここで懸念されるのが「賃貸経営に関する制度知識が不十分なままオーナーになる」ケースです。
物件を売却する側(元オーナーや仲介業者)は、以下の点を明確に説明・配慮すべきです:
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日本の借地借家法の基本構造
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家賃の改定ルール
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入居者管理の実務と注意点
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管理会社の選定と体制維持の重要性
これらを理解せずに投資目的だけで購入すると、今回のような事件が再発しかねません。
オーナー・仲介会社が果たすべき社会的責任
今回の件では、ネット上でも「家賃の値上げは違法」「絶対に断れる」といった誤解が広がり、正当な家賃調整すら難しくなる風潮も見え始めています。これは、業界全体にとって大きなマイナスです。
だからこそ今、不動産売却を担うプロフェッショナルとしての説明責任と対応力が問われています。
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短期的な売却益だけでなく、購入後の管理や運営に目を向けた提案
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「誰に売るか」という観点での相手の信頼性評価
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契約書や重要事項説明書への制度説明の反映
これらを実践することで、今後の信頼される不動産取引のモデルケースとなることができます。
今後に向けて:信頼される売却戦略とは
この事件をきっかけに、次のような視点を不動産オーナー・売却検討者の皆様に持っていただきたいと考えています。
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短期利益ではなく、長期的信頼と実績を重視
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購入者の「管理力」まで考慮した売却戦略
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地域住民・借主との信頼関係の継続可能性を確保
また、これから物件を売却されるオーナー様にとっても、相手が誰であれ、しっかりと「ルールを理解したうえで経営できる人か」を見極めることが、不動産の価値維持につながります。
教訓を次に活かす不動産売却を
板橋区での「家賃2.5倍トラブル」は、法的にも社会的にも逸脱した行為であり、断じて許されるものではありません。しかしこの経験から、私たちは「プロの不動産事業者」として多くの学びを得ることができます。
✅ 外国人投資家の増加に対し、制度理解を前提とした取引の重要性
✅ 売却時には、物件の“将来の管理”も見据えた提案を行う責任
✅ 入居者と地域社会との信頼を壊さない取引姿勢
私たちの使命は、単に「売ること」ではなく、「その後の未来にまで責任を持つこと」ではないでしょうか。
信頼される取引こそが、次の売却機会や紹介にもつながると信じています。
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