不動産を相続しない場合は「相続放棄」をすることになります。状況に応じて「相続放棄」を検討する方もいるでしょう。
相続するより放棄したほうがよい場合はありますが、困った状況におちいる場合もあります。不動産の相続放棄をする際のメリットやデメリットを知っておくようにしましょう。
相続放棄とは
相続放棄とは「被相続人の財産を一切受け取らないこと」です。資産を受け取らない代わりに、負債も受け取らないことを意味します。
家庭裁判所で相続の放棄をする旨を申述します。
申述する人 | 相続人(未成年者のときは、その法定代理人(親権者など)が代理して行う) |
申述する裁判所 | 亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所 |
申述に必要な費用 | 申述する相続人1人につき ・収入印紙800円 ・連絡用の郵便切手470円【84円5枚、10円5枚】 |
申述に必要な書類 | ・申述書1通 ・別紙「相続放棄の申述に必要な書類」のとおり |
相続放棄は、被相続人が亡くなってから3カ月以内におこないます。管轄の家庭裁判所で手続きする必要があります。
相続人が複数人いる場合、相続放棄の手続きは全員でおこないます。※各個人がそれぞれおこなうのも可
不動産を相続する場合は、以下の記事を参考にしてください。
https://www.kobebaikyaku.jp/information/%E4%B8%8D%E5%8B%95%E7%94%A3%E7%9B%B8%E7%B6%9A%E3%81%A7%E5%BF%85%E8%A6%81%E3%81%AA9%E3%81%A4%E3%81%AE%E6%9B%B8%E9%A1%9E%E3%81%A8%E5%BF%85%E8%A6%81%E3%81%AA%E6%89%8B%E7%B6%9A%E3%81%8D/
不動産を相続放棄するとどうなる?
自分だけが不動産を相続放棄しても、法定相続人の誰かが相続します。
しかしすべての法定相続人が相続放棄した場合、相続財産を相続する人がいなくなります。この場合「相続財産は法人化され、相続財産管理人を選定」します。
相続財産管理人の選定とは
相続人の存在,不存在が明らかでないとき(相続人全員が相続放棄をして,結果として相続する者がいなくなった場合も含まれる。)には,家庭裁判所は,申立てにより,相続財産の管理人を選任します。
相続財産管理人は,被相続人(亡くなった方)の債権者等に対して被相続人の債務を支払うなどして清算を行い,清算後残った財産を国庫に帰属させることになります。
なお,特別縁故者(被相続人と特別の縁故のあった者)に対する相続財産分与がなされる場合もあります。
引用:裁判所|相続財産管理人の選任|概要
相続財産管理人の選任に必要な詳細は以下のとおりです。
申立人 | ・利害関係人(被相続人の債権者、特定遺贈を受けた者、特別縁故者など) ・検察官 |
申立先 | ・被相続人の最後の住所地の家庭裁判所 |
申立てに必要な費用 | ・収入印紙800円分 ・連絡用の郵便切手 ・官報公告料4,230円 |
申立てに必要な書類 | ・申立書 ・標準的な申立添付書類 |
不動産を相続放棄するメリット・デメリット
不動産を相続放棄する場合、メリットとデメリットが存在します。
相続放棄をする前に知っておくほうがよいことなので、紹介します。
不動産を相続放棄するメリット
不動産を相続放棄するメリットは2点です。
- 負債の返済を免れることができる
- 相続後の負担を軽減(回避)できる
それぞれをわかりやすく解説します。
負債の返済を免れることができる
被相続人に借金などの負債がある場合、相続放棄により返済を免れることができます。
相続放棄はマイナスの資産についても放棄できるからです。
たとえば被相続人がギャンブル好きで多額の借金があったとしましょう。相続人には心当たりはなく、死後に借金が発覚することもあります。相続すると相続人が返済する義務が生じます。
不動産でも同様に、住宅ローンなどの負債が残ることがあります。返済額が大きく負担になる場合は相続放棄するほうがよいこともあります。
相続後の負担を軽減(回避)できる
不動産を相続後、必要になる負担を軽減(回避)することができます。不動産には営利目的で使用しているものがあるからです。
たとえば農業や林業をおこなっている人が亡くなった場合、土地を相続することになります。農業を継続しない場合は相続放棄するほうがよいかもしれません。
相続した場合に事業を引き継ぐ手続きが必要になったり、仕事を変更しなければいけなくなったりするからです。
状況に応じて相続放棄を検討するとメリットになると言えるでしょう。
不動産を相続放棄するデメリット
不動産を相続放棄するデメリットは2点です。
- 新たな相続人が現れてトラブルになる
- 現金の相続もできない
それぞれ解説します。
新たな相続人が現れてトラブルになる
不動産の相続放棄をすると、新たな相続人が現れることでトラブルになるケースがあります。遠い親戚などが相続したいと述べてくることがあるからです。
しかし相続放棄は再申請ができないため、大きなトラブルに発展する場合があります。
相続権の順位を確認し、法定相続人全員の意思を把握してから相続放棄するようにしましょう。
相続権の順位
法定相続人は、法律により以下のように定められています。
- 配偶者は常に相続人となる
- 死亡した人の子供
- 死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)
- 死亡した人の兄弟姉妹
引用:国税庁|No.4132 相続人の範囲と法定相続分
順位が下位になるほど疎遠になっている場合があり、相続権を求めて現れるかもしれません。また負債がある不動産を相続した場合、下位順位の人も負債を相続することになります。
予期せぬ負債にはトラブルがつきものですので、必ず相続人全員の意思を確認してから相続するか相続放棄するか検討しましょう。
現金の相続もできない
被相続人が不動産を売却していた場合など、現金を相続することはできません。相続放棄により一切の財産を受け取らないことになるからです。
仮に不動産と現金がある場合でも、現金だけ受け取ることもできません。すべての資産を把握してから相続放棄を検討するようにしましょう。
不動産を相続した後で現金が必要になることがわかっている場合、以下のような方法があります。
- リバースモーゲージ
- ハウスリースバック
どちらも不動産を相続したあとで現金を手に入れる方法なので、検討しておきましょう。
不動産を相続放棄する注意点
不動産を相続放棄する際の注意点は3つです。
- 放棄の取り消しはできない
- 再申請はできない
- 不動産の相続放棄ができないケースがある
それぞれ説明します。
放棄の取り消しはできない
認められた相続放棄の取り消しはできません。
仮に相続放棄後にプラスの財産が発見されたとしても、相続放棄を取り消すことができないので注意しておきましょう。
そのため、相続放棄をする前には財産調査を徹底しておこなう必要があります。もし3カ月以内に財産調査が終わらなかったり、意思決定が難しかったりする場合は家庭裁判所に期限延長申請ができます。
期限延長申請は、さらに3カ月延長されます。
再申請はできない
相続放棄は再申請できません。仮に申請書類の不備などで受理されなかったとしても同様です。
相続放棄を申請していても、書類不備により負債を抱えるケースもあります。必ず専門家に相談するなど、確実に申請が受理されるようにすることをおすすめします。
不動産の相続放棄ができないケースがある
不動産の相続放棄ができないケースが2つあります。
- 被相続人の不動産を処分した場合
- 被相続人の不動産を隠匿した場合
被相続人の不動産を処分した場合
「被相続人の不動産を処分」とは、建物の取り壊しや売買・解約などの行為を指します。
ただし以下の2つの行為は該当されません。
- 管理行為(建物の修繕など)
- 賃貸する行為
相続放棄を検討している場合は、気をつけておきましょう。
被相続人の不動産を隠匿した場合
被相続人の不動産を隠し持つ行為をした場合、相続放棄はできません。隠匿とは以下のような場合です。
- 他の相続人に渡して隠す
- 消費する
- 相続財産目録に記載しない
隠匿が発覚した時点で法的に処罰されるケースもあるようです。必ず正規の手続きを経て相続放棄を検討するようにしましょう。
まとめ
相続放棄をすると負債の返済を免れることができます。しかし法定相続人の全員が同意していない場合はトラブルになる可能性があるでしょう。
自分だけが相続放棄した場合は、他の法定相続人が相続することになります。
そのため後でプラス財産が見つかっても何も言うことができません。相続放棄の再申請や取り消しはできませんので、財産調査を徹底しておく必要があります。
また再申請ができないことにより、負債を抱えることもあります。専門家に相談するようにして必ず申請できるよう手続きすることをおすすめします。
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