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イギリス:スターが大家をやっている物件に若者が夢中!?

英国紙「ガーディアン」によると、インターネット上で家主をやっているランドロードインフルエンサーに注目が集まっています。インフルエンサーとはSNSで影響力を持つ人のことです。この家主の多くが20代〜30代の若者で、購入した古い住宅をリフォームして、売却もしくは賃貸運用することで利益を得ています。記事で紹介されたジェイムス・クープランドさんは、勉学に励みながらも安いローンで老朽物件を購入して、YouTubeで学んだ大工技術でリフォームをしました。

結果として購入した金額の倍にあたる金額で物件を売却したと言われています。この出来事をショート動画にしてTikTokにアップしたところなんと一晩で6万回も再生され、現在では44万人以上のフォロワーが彼の動画に注目しています。フォロワーの中心は家主よりも若い10代〜20代前半の若者が中心となっています。自分たちよりも少し上の世代が不労所得により莫大な富を得ていると言うこともあり、フォロワーの多くは憧れの眼差しを向けています。しかしここで勘違いしてほしくないのは大家業はそんな甘い事業ではないということです。日本でもスルガ銀行問題に代表されるように不動産投資には落とし穴がたくさんあります。ガーディアンの記事でもベテラン大家などがインタビューに応じており、大家業は不労所得で莫大な富を得ることは不可能であり、動画は儲かることを強調し過ぎていると懸念を表明しています。実際、大家業をおこなうには様々な知識やスキルが必要で、YouTubeやTikTokで紹介されていないような地味で大変な作業も多くあります。そのうえ大家業には様々なリスクがつきまとうため、簡単に儲かるビジネスだと勘違いしてはなりません。確かに大家業が楽で儲かる仕事だと勘違いしてはいけないと言う意見に共感できます。

しかし若者からしたらそれは古い考えだと笑われてしまうかもしれませんね。近年日本でもインフルエンサーなどの影響で大家業を志す人は増えており、多くの若者はSNS動画で情報を得ています。そのため今後日本でもイギリスのように家主インフルエンサーが登場するのは時間の問題なのかもしれません。

韓国:チョンセ詐欺が社会問題化

韓国には独特の家賃制度として「チョンセ」という制度があります。その仕組みは借主が貸主に一定額の保証金を預け、貸主は保証金を様々な形で運用して収入を得ます。双方で決めた契約期間が終了すると保証金は全額返却されます。つまり借主はタダで家を借りることができます。保証金の額は様々ですが、物件の売買価格の7〜8割程度とされています。

しかし、近年この保証金が返還されないトラブルが相次いで発生し、警察が詐欺事件として捜査をしています。被害者は韓国全土で数百人にのぼると言われ、被害総額は数百億にも上るとされ社会問題化しています。専門家は詐欺蔓延の背景には、高騰していた不動産価格が下落に転じたことにあると見ています。この影響により、受け取った保証金よりも安い価格でしか売れなくなった物件の大家が、保証金を返せなくなった可能性があると専門家は指摘しています。また、大家の中には安価な物件を購入したにも関わらず借主から高額な保証金を受け取り、その保証金を別の不動産投資に当てていた大家も一定数存在し、結果として投資などによって引き起こされた破綻のしわ寄せが借主に来てしまったと言わざるを得ません。チョンセはインフレ下の高度経済成長期に有効だったもので、成熟期を迎えた韓国ではマイナス面が多いという声もありますが、長きにわたる習慣を変えるのは難しいと言われています。被害者の多くは政府に救済措置を求めていますが現在の法律での救済は難しく、悲しいことに被害者からは数人の自殺者もでています。生活の基盤である賃貸住宅が原因で若者が命を絶つ現状に世論は不満や怒りの声がより一層高まっています。

アメリカ:オフィスの賃貸住宅化が進行中

日本よりもリモートワークが定着しつつあるアメリカでは、大都市を中心にオフィスビルを住宅に改修する計画が進んでいます。オフィス過剰と住宅不足が社会問題化しているアメリカでは、2つの問題を解決できる可能性があると「ニューヨーク・タイムズ」が紹介しています。しかしビルによっては住宅に適した作りをしていないビルもあるため、想定する賃料と工事代金を天秤にかけた時利益は出るのかといった計算が必要になるようです。また住居とオフィスでは建築規制が異なるため、実際に住居として貸し出すためには、さまざまな基準をクリアする必要があります。一方で、住宅改修に適しているオフィス物件を判定するのは難しいことではなく、ビルの建築年を見れば一目瞭然です。建築技術が発展していなかった戦前の古いビルは空調が貧弱だったため、窓を開けて空気を取り込む仕様になっており住宅への改修が容易と言われています。しかし現代のオフィスビルは、空調の普及で窓が開かない部屋もあるため住宅には適さないと言われています。ある調査では、リモートワークをしている人の9割以上がこのままリモートワークを継続したいと考えており、オフィスと住宅の関係に歴史的な転換点が来ていると指摘する声もあります。行政も都市部の空洞化を放置するわけにいかず規制緩和を検討しているようです。