【管理スタッフレポート】高齢者一人暮らしのリスクを回避する方法は︖

高齢者の入居問題に対応するには…?

先日、同業の賃貸管理スタッフの集まりに参加しました。そこで、

築25年の木造アパート(和室6、洋間6、DK6)に新築から入居されたご夫婦の事例が報告されました。ご主人は58歳で奥様は56歳で、二人とも元気で収入もしっかりしていました。ところが、入居後14年目に奥様が亡くなり、ご主人は一人暮らしとなりました。そして、2023年の秋にご主人が寝具の中で亡くなっているのが発見されました。ご主人の死因は病死で、83歳でした。その時点で発見されるまでに7日が経過していたため、大家さんと相談した結果、次の入居者募集では家賃を1割引きに設定し、「告知事項あり」とすることになりました。大家さんは事故物件になることを懸念しており、「高齢者の一人暮らしの方には貸さない」という方針でしたが、今回の事態を防ぐことはできませんでした。質問としては、「管理会社はこのような状況にどう対応すれば良いでしょうか」

というものでした。

この報告を受け、今回は「高齢者の入居問題」に焦点を当てて考えてみたいと思います。数年前にNHKの「クローズアップ現代」で、事故物件や孤独死が取り上げられたことがありました。その頃は新型コロナの影響もあり、そのような事案が増加傾向にあった時期でした。番組では、所有するアパートの一部屋が事故物件となった場合の事例が紹介され、大家さんが「2度と同様の経験はしたくないので、高齢者には貸さない」と話していたことが印象的でした。この番組でいくつかのキーワードが提示されましたので、それに基づいて検証してみたいと思います。

4人に1人が65歳以上!?

日本は高齢化が進展しています。2023年10月のデータによれば、総人口の28.9%が65歳以上であり、既に4人に1人を超えています(内閣府の情報)。さらに、近い将来には65歳以上が3人に1人になる日も予測されています(2036年との予測があります)。また、60歳以上の持ち家比率は79.8%であり(2018年の住宅・土地統計調査による)、賃貸住宅に住んでいる方が約2割に上ることになります。このような状況から見ると、賃貸市場は「借り手」の需要が増加し続ける見込みです。この市場は、空室の長期化によって収益が減少することを懸念する大家さんにとって無視できないものとなっています。
※神戸市中央区は2020年の国勢調査では、人口147,518人対し21.10%が65歳以上の高齢者というデータが出ています。

事故物件に住みたくない人は7割以上

不動産売却の相談

一方で、一旦事故物件になると、借り手が極端に少なくなることも現実です。事故物件は「殺人や自殺などで人が亡くなった部屋」を指し、その中には「病死や自然死で発見が遅れたケース」も含まれます。高齢者の一人暮らしはその可能性が高いと考えられ、それゆえに敬遠される傾向があります。しかし、実際の孤独死に関する全国的な統計データは存在しません。そこで、一般社団法人日本少額短期保険協会の孤独死対策委員会が2022年に発表したデータを参考にしてみましょう。この委員会は、孤独死に関する認知・啓蒙活動を行っている団体です。

調査によると、孤独死で亡くなった方の平均年齢は61.9歳であり、死因の66.8%が病死で、60歳以上の割合は60.8%、70歳以上の割合は29.9%となっています。60歳以下が4割、60歳以上が6割という割合です。つまり、高齢者による孤独死は確かに多い傾向があります(個人的には予想以上に顕著ではないと感じました)。ここでの課題は、「事故物件化を防ぐ仕組みやルール作り」です。近隣在住の近親者の身元引受けを条件とする、地域の福祉活動関係者や地域住民と協力して「見守る態勢」を構築する、セコムやAI機器の活用で異常事態をリアルタイムで把握するなど、様々な方法が報告されています。このような工夫により、事故物件化を防ぐ余地があることが分かります。

「高齢者4人に1人が入居拒否を受けた経験あり」

高齢者の一人暮らしは、孤独死の不安だけでなく、年金のみの収入や貯金の減少、認知機能の低下による生活への影響など、複合的な不安が関わっています。これらの要因から、多くの大家さんが高齢者の入居を避ける傾向にあります。しかし、家賃支払いの心配に関しては、高齢者向けの保証会社を利用することで解消することができます。また、近親者との二重の保証も有効な手段と考えられます。認知機能に関しては、緊急時には近親者の身元引受人に頼ることができます。これらの問題には、完全に対応できないわけではないのです。

空室がすぐに埋まる物件であれば、高齢者にフォーカスする必要はないかもしれません。しかし、実際には需要を上回る絶対的な物件供給量があり、特に築古や不利な立地条件の物件では対策が必要です。ただ、家賃の値下げや使える経費には限界があります。高齢者市場の増加は一つの選択肢ですが、リスクを理解し、適切な回避策を検討する必要があります。