【賃貸経営塾】更新契約実務と “よい賃貸経営” の関係は︖

Q

先日、父が亡くなり神戸市中央区ある20年前に建てられた賃貸マンションを相続しました。契約「自動更新」という慣行があるようで、これまで私が引き継いでから、借主と直接更新契約を結んだことがありません。一部の地域では、契約を2年ごとに更新する合意書を取り交わす習慣もあるようです。私は借主と定期的に会ってコミュニケーションをとることが重要だと思っているのですが、賃貸経営と更新契約の関係について詳しく教えていただけますか?

A

賃貸借契約の更新には、「自動更新」と「合意更新」の2つの地域性があります。質問者様の地域は自動更新のようですね。自動更新とは、契約で「〇年ごとに自動的に更新する」と定められており、特別な更新手続きは必要ありません。一方、合意更新は「〇年ごとに貸主と借主が合意して更新する」と規定されており、契約期限が到来した際に貸主と借主が合意文書を取り交わします。通常、合意更新の場合には「更新料」として借主から貸主へ、合意した新しい家賃の1カ月分が支払われることが一般的です。首都圏や京都・滋賀などは合意更新が一般的であり、他の地域でも合意更新の例が点在していますが、〇の部分はほとんどの場合、2年となっています。

 

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更新で借主とコミュニケーションを

「賃貸経営と更新の関係は?」という質問に対するアプローチは、更新という機会をどのように活用するかという観点になります。基本的に、大家としての最大の関心事は、賃貸経営において物件を満室で維持し、収益を確保することです。このため、リフォームや家賃の調整、入居者募集に関する努力を行います。必要な投資は惜しまず行い、一方で不必要な経費は削減します。建物や設備の老朽化は避けられませんので、必要な修繕工事を計画的かつ効率的に行います。共用部やエントランスの清掃維持は、入居者が快適に過ごすために重要ですが、そのためには借主との良好な関係構築も必要です。その一環として、「更新時などに借主とコミュニケーションを図る」という手法があります。これらの施策をすべて100点満点で実施するのは難しいため、大家が重要だと感じる手法を採用することが求められます。したがって、提案する「更新を通じた借主とのコミュニケーション」は必ずしも全てのケースで必要とされるものではありません。

知らない間に発生しているリスク

合意更新の地域では、通常、2年ごとに合意文書を交わすことが一般的であり、この流れは「更新料を徴収して文書に署名するイベント」として捉えられています。一方、自動更新の地域では、大家は更新の時期を見落としてしまうことがあります。しかし、2年が経過すれば、借主の家族構成や勤務先の変化などが起こるかもしれません。特に個人の保証人契約の場合は、定期的に保証人の状況を確認する必要があります。契約が5年や10年と経過すると、変化に気づかずにいることはリスク管理の観点から不安要素です。

借主に対して積極的に連絡を取ることは、重要な情報を把握し、借主の不便を改善するチャンスでもあります。万が一トラブルが発生した場合も、適切なコミュニケーションがあれば円満に解決する可能性が高くなります。また、借主にとっても、自分が大事にされていると感じ、永く居住したいという意欲が高まるでしょう。

現在の賃貸市場では、大家同士が借主を獲得するために競争している時代です。そのため、「入居してくれた借主に長く居住してもらう」という考え方は、決して間違っていないと言えます。

訴訟の中で、賃借人側は次のように主張しました。「滞納した賃料は保証会社が代わりに立て替えて支払っており、その結果、賃料は滞納していない」という反論を行い、賃貸借契約の解除と明渡しについて争いました。

この事例において、裁判所は賃貸人からの賃料滞納を理由とした賃貸借契約の解除を認めました。

ひとつの考え方として‥

合意更新の地域では、更新をイベントとして捉えるのではなく、上述のような目的に活用する考え方があります。ただし、自動更新の地域ではこのような習慣がないため、新たに取り入れる必要があります。すぐに変更を行うのは難しいですが、新しい契約では「2年ごとの『状況確認』という更新手続き」を開始することができます。入居後〇年経過したら、「特に問題はありませんか?」という問いかけとともに、同居人や勤務先などの情報を記入する身上書的な書類を用意し、情報を確認しながら更新手続きを行います。合意更新のように新家賃の1カ月分の更新料は取れませんが、不動産会社が「事務手数料」として5,000円から10,000円程度を徴収すれば、手間賃も何とか確保できます。これにより、最新の借主情報を得るだけでなく、借主の細かな不便も把握できます。

これまでの内容を踏まえて、質問者の感想はどうでしょうか?「手間がかかり過ぎて効果を期待できない」と感じるか、それとも「借主との関係構築が重要だ」と感じるかは個人の考え方によるでしょう。どちらの考えでも、これは「満室を維持し収益を確保するため」の施策の一つです。大家が重要だと思うことを実施することが重要です。

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