【弁護士による賃貸法律相談室】国籍を理由とした入居拒否は違法?

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店長恋水

こんにちは。KOBE売却&買取ナビ店長の恋水です。最近神戸でも外国人の方で住居を探される人が多くなってきました。そこで国籍を理由とした入居拒否は違法とその事例をお伝えします

契約自由の原則とその制限

民間の賃貸物件において、賃貸人は新たな入居申込みに対し、契約を結ぶかどうか、そしてどの申込者と契約するかを自由に決定する権利があります。これは民法における「契約自由の原則」に基づくものであり、通常は個人同士の対等な契約を前提としています。しかし、社会的・経済的弱者の保護の観点から、契約自由は差別的な取り扱いを含めて制限されることがあります。

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外国籍入居者と賃貸契約の問題

その中でも、実は賃貸物件において「外国人お断り」とする行為は特に問題視されます。賃貸人側は、契約自由の原則に基づいて入居者を選択する権利を持っています。しかし、外国籍を理由に入居申込みを拒否した場合、不法行為として損害賠償を求められる可能性があります。実際に損害賠償責任が認められた裁判事例(京都地方裁判所平成19年10月2日判決)を紹介します。

この事例は、外国籍(韓国籍)の入居予定者が、自身が勤務する法人を賃借人として入居申込みを行
い、仲介業者から入居審査が通ったと通知を受け、入居申込金や敷金・礼金16万円と前払い賃料など合計約47万円を支払いました。
さらに、仲介業者から提示された賃貸借契約書にもサインして差し出しました。しかし、その段階で、賃貸人側から「住民票が用意できない方は入居を断っている。」と、賃貸借契約の締結を拒否されました。なお、入居予定者は、契約書へのサインの後に外国人登録原票記載事項証明書を提出しており、その直後に賃貸人側から契約の締結ができない旨の返答を受けています。以上の状況により、入居申込者(法人)と入居予定者は賃貸人に対して、韓国籍であるという正当でない理由で賃貸借契約の締結を拒絶したことは損害賠償義務を免れないとして提訴しました。

 実際の裁判事例

実際の裁判事例では、外国籍の入居予定者が入居申込みを行い、審査が通った後に賃貸人が入居を拒否したケースがありました。このような行為は不法行為と認定され、賃貸人に損害賠償責任が課せられました。

これは、賃貸人は契約直前に入居者が外国籍であることを知ったこと、及び、入居者が外国人登録原票記載事項証明書を提出しているにもかかわらず、これが住民票ではないことを理由に本件物件を賃貸しない、としたことからすれば、賃貸人が賃貸しなかった理由は入居予定者の国籍〔すなわち、入居者が日本国籍ではなかったこと〕にあることは明らかであると認定した上で、貸マンションの所有者が、もっぱら入居申込者の国籍を理由に賃貸借契約の締結を拒むことは,およそ許されないと述べ、賃貸人には不法行為責任が成立すると判断し、入居予定者の損害金請求のうち、慰謝料100万円と弁護士費用10万円の合計110万円の損害賠償を認めました。なお、賃借人となる予定であった入居者の勤務先の法人に対しても、「本件賃貸借契約の成立が合理的に期待される段階まで両者の準備が進んでいたにもかかわらず,合理的な理由がなく本件賃貸借契約の締結を一方的に拒んだものであって,信義則上,原告会社が被った損害を賠償する責任を負うものと解するのが相当である。と述べています。

 実際の裁判事例をもとに注意しなければならない点

裁判所は、不法行為を認定しながらも、実際に損害が発生していないため損害賠償の支払いを認めない判決を下しました。賃貸契約において外国籍を理由とした拒絶は、裁判所において不法行為とみなされる可能性があります。このリスクを認識し、入居審査においては国籍だけでなく、収入や滞在期間、保証人の有無などを総合的に判断することが重要です。不当な差別的な取り扱いを避け、公平性を確保するためにも、所有者は慎重な審査を心掛けるべきです。

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