不動産の相続争いを引き起こす要因と対策方法に関して

不動産の相続トラブルは決して他人事ではありません。親が居住している実家の不動産そのものが相続トラブルに発展することもあり得るからです。さらに不動産が絡む相続トラブルは解決までに長い時間を要する場合もあり、トラブルに巻き込まれないためには事前の対策がとても重要です。今回は不動産の相続で起こりやすいトラブルの要因や解決策を紹介したいと思います。

不動産相続争いの現状

不動産の相続によるトラブルは年々増加傾向にあります。最高裁判所が作成した平成24年司法統計によると、家事調停や審判に至った遺産分割トラブルの件数は、2002年の約11,000件から2012年には約15,000件に増加しています。相続の家事調停において遺産分割の協議で合意に至らなかった場合、裁判官と民間から選ばれた調停員が仲介役となって解決を目指します。それでも調停が成立しない場合は審判に移行します。

相続争いが勃発するのは5,000万以下?

相続トラブルと聞くと裕福な家庭で勃発するトラブルと思いがちですが、実は遺産分割が行われる相続案件のうち遺産総額が5,000万以下の案件が全体の約7割を占め、1,000万以下のケースだけでも全体の約3割を占めています。一方遺産総額が1億を超える資産家の家庭で遺産分割協議に至るケースは少数派となっています。自分の親族は相続トラブルとは無縁だと思っている方の中には、たとえ遺言書がなくとも法定相続分に従って遺産分割をすればいいという考えをもっている人も多いと思います。しかし、すべての相続財産が現金のようにきれいに分けられるわけではありません。自宅などの不動産ではその資産価値をどう評価するかによってそれぞれの相続額が大きく違ってきます。実際に不動産を売却して現金に換えれば問題は解決しますがそう簡単に実行できないのが実情です。親が住んでいた家に同居していた相続人がいる場合、まずその家を売るという選択肢を外さなければなりません。その上で不動産価格から割り出した金額を他の相続人に渡すことになりますが、金額によってはトラブルに発展する可能性もあります。さらに長期間親を介護していた場合、無縁関係だった兄弟姉妹の相続と同じ金額というのは納得できないといった主張も多いです。親の多くは自宅といった不動産を所持していることを考えると、相続争いは極めて身近な問題であるといえます。

不動産相続でトラブルを引き起こす要因5選

不動産を相続する場合、遺族の間でよくトラブルが発生したという話をよく聞きますが、なぜトラブルへ発展してしまうのでしょうか。多くの場合以下5の要因が起因しているといわれています。

  1. 相続内容が分かりにくい
  2. 遺言書の内容が公平を欠いている
  3. 遺産の大半が不動産
  4. 相続人の人間関係が希薄
  5. 付与分の有無

下記で詳しく解説していきます。

①相続内容が分かりにくい

そもそも相続できる土地はどこにあって、どの程度の規模なのか把握できていない場合、相続人同士で「実はひっそり隠している土地があるのではないか」など疑心暗鬼になりトラブルへと発展するケースがあります。

このことから被相続人が存命のうちに相続できる土地の場所や規模などをはっきりさせ、相続内容を整理し明確にすることが重要となります。さらに遺言書に関しては不動産だけでなく、銀行預金・株などの有価証券・住宅ローン・生命保険・自動車・貴金属類などの資産目録を作成しておくだけでもトラブルを回避できます。

②遺言書の内容が公平を欠いている

遺言書がない場合相続トラブルに発展してしまったという話は耳にする機会も多いと思います。しかし遺言書がある場合でも、遺言書の内容があまりにも公平性に欠けた場合トラブルへと発展する可能性は否めません。不動産などの遺産は遺言書の記載通りに分けるのが原則となるため、公平性に欠けた遺言書はトラブルを招く元凶となります。

③遺産の大半が不動産

とくに不動産の場合現金のように公平分割することが難しいです。どの不動産を誰が相続するのかで揉めてしまう場合や不動産評価方法で全員合意にならず揉めてしまう場合、分割する際に代償と換価分割どちらの方法を取るかで意見が合わず揉めてしまう場合、不動産を共有状態にしているため活用も売却もできず放置されている場合が散見されます。

このトラブルが長きにわたり繰り広げられた結果、いつまでも不動産の分割方法が決まらないため相続登記の手続きを行えず長年放置状態となってしまいます。

④相続人の人間関係が希薄

被相続人の兄弟姉妹・甥姪・孫が相続人に含まれる場合それぞれの関係性が希薄なため、全員の合意を得ることが難しく後にトラブルへと発展するケースがあります。

さらに代襲相続の場合相続人の話し合いの場が当事者同士の初顔合わせとなる場合もあるため、さらに話し合いが難航する可能性もあるため注意が必要です。

⑤寄与分の有無

特定の相続人に介護の負担が偏っている場合にもトラブルへと発展しやすいです。被相続人の生前、介護に専念した相続人には寄与分が認められます。相続人に寄与分が認められれば、本来の法定相続分よりも多くの相続財産を受け取ることができます。しかし相続人が介護をしても他の相続人は介護による貢献を認めないことが多く、トラブルに発展することがあります。また寄与分が認められたとしても、具体的にどの程度の額を相続財産に加算すべきかをめぐって意見が対立することもあります。

不動産相続トラブル対処法6選

不動産相続において相続人同士、トラブルへと発展した場合、どのように対処すればいいのか分からない方も多いと思います。不動産相続におけるトラブルは以下6パターンが多いです。

  1. 遺言書紛失もしくは保管場所が分からない
  2. 遺言書の内容に偏りがある
  3. 生前贈与が行われていた
  4. 介護した寄与分の権利を有する人がいる
  5. 内縁関係にある配偶者の存在
  6. 子どもがいない夫婦

今回はこれら6パターンのトラブル対処法について見ていきたいと思います。

①遺言書紛失もしくは保管場所が分からない

被相続人が突然亡くなったとき「遺言書がある」と言われてもその所在が分からない場合があります。遺言があると分かっても実際の遺言書が見つからなければ何の効力もありません。そうなると被相続人の意志が相続に反映されず、相続人同士トラブルへ発展する可能性が高くなります。遺言書の保管場所は自筆証書遺言か自筆証書遺言のどちらによるかで保管場所が変わってきます。自筆証書遺言である場合、公証人が作成し公証役場で保管する遺言書のことで、原則として20年間は公証役場で保管されます。したがって遺言書が見つからない場合、近くの公証役場に被相続人の公正証書遺言が保管されているかどうかを確認することが必要です。

なお、どの公証役場に遺言書が保管されているかわからない場合でも公証役場間で検索することが可能です。一方自筆証書遺言である場合、遺言書の保管場所を共有しておかないと相続人全員で家中を探すことにとても手間がかかります。しかし遺言書の保管場所を共有したが故に被相続人の生前に開封・閲覧・改ざんされる可能性があります。見つけにくい場所に保管すれば、誰にも見つけてもらえなくなる可能性があるため、遺言書の保管場所は悩ましいです。以上の内容を参考に遺言書が見つからない場合探してみるといいでしょう。

②遺言書の内容に偏りがある

遺産相続における被相続人の財産は原則自由に処分することができます。しかし、遺言書の内容が明らかに偏った配分になっている場合トラブルへ発展する可能があります。遺言書に全財産を第三者に贈与する旨の記載がある場合や遺留分を無視した形で遺産分割する内容が記載されているケースが該当します。兄弟姉妹以外の相続人には、「遺留分」という最低限の相続分があります。

たとえば被相続人が内縁の妻・愛人・認知した子どもなどに財産を残す旨が記載している遺言書があった場合、財産の分配額が大きすぎると他の相続人の遺留分を侵害することになりトラブルの元となります。上記のようなトラブルを避けるためにも法定相続人の遺留分を侵害しないような遺言作成をすることが大切です。

③生前贈与が行われていた

生前贈与とは被相続人の生前に相続人へ財産を贈与することです。注意すべきは何をもって生前贈与とするか、またその評価方法を巡りトラブルへ発展することがあります。トラブルを避けるためにもアンバランスで不透明な生前贈与はしないようにしましょう。生前贈与を行う場合は相続人全員にとって不公平にならないように配慮しましょう。また本当に生前贈与が行われたか否か相続人同士で議論になることもよくあります。そのため生前贈与を行う場合は必ず贈与契約書などを作成し「誰に」「何を」「いくら」贈与したのかを明確に記録しておくのも有効といえます。

④介護した寄与分の権利を有する人がいる

被相続人と同居して介護をしていた相続人がいる場合、その貢献度を巡って争いになるケースが多くなります。たとえば、親と同居して介護をしていた相続人は「介護で苦労したのだからもっと多くの遺産をもらって当然」と考える傾向があります。一方親と別々に暮らしていた相続人は、親と同居していた相続人に対し「親と同居していたのだから家にタダで住むなど、経済的な援助を受けていたはずなので権利の主張はおかしい」と考えがちです。

双方の主張を黙殺したままでは相続がスムーズに進まないばかりか、精神的に辛くなってしまうためまずは冷静に話せる場を設けましょう。

⑤内縁関係にある配偶者の存在

内縁の配偶者とは同居など事実上婚姻関係にあるにも関わらず婚姻届を出していないため、法律上配偶者として認められていない妻・夫のことをいいます。内縁配偶者の場合同居して被相続人の資産形成に貢献したとしても相続する権利はありません。そのため内縁の配偶者が亡くなった場合、その財産は法定相続人に帰属することになり、法定相続人がその財産に住めなくなるケースも出てきます。内縁の配偶者が不利益を被らないためにもまずは遺言書をしっかり残しておくことが重要となります。

⑥子どもがいない夫婦

子どもがいない夫婦の場合、法定相続人同士の関係が薄いことが多いためトラブルへと発展しやすいです。子どもがいない場合配偶者と相続順位第2位の親が相続することになりますが、配偶者と親の仲が良好でない場合トラブルに発展しがちです。子どもがいない夫婦が相続を巡るトラブルを避けるためにはやはり遺言書をしっかり残しておく必要があります。

不動産相続のトラブルは弁護士に相談もあり?

相続人同士でトラブルを解決するのが難しい場合は弁護士に相談するといった方法もあります。弁護士に相談するメリットは以下になります。

  1. 第三者介入でスピード解決
  2.  法的根拠に基づいた解決ができる
  3.  煩雑な手続きを丸投げできる
  4. 素人が見落としがちな問題を発見できる
  5. 他の相続人と話す必要がない

下記でメリットに関して詳しく解説していきたいと思います。

 

 

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メリット1 第三者介入でスピード解決

親族間の相続争いは親しい間柄であるが故に疑心暗鬼に陥り複雑化しがちです。そこで法律の専門家である弁護士が第三者として介入することで、親族間の話し合いがまとまり冷静な判断ができるようになります。

メリット2 法的根拠に基づいた解決ができる

相続は遺産の全容を正しく理解することから始まります。弁護士であれば素人では見落としてしまうもの(不動産、株券、宝石など)でも、法的根拠に基づいて遺産であると主張することができます。そのため損をしたり権利のある遺産があることに気づかなかったりすることを防ぐことができます。

メリット3 煩雑な手続きを丸投げできる

遺留分減殺請求や相続放棄などの手続きが複雑な場合、弁護士に委任した方が迅速かつ確実に手続きが完了します。

メリット4 素人が見落としがちな問題を発見できる

遺産相続は知識がないまま進めてしまうと損をしてしまう可能性が高いです。遺留分減殺請求をしなかった相続人や被相続人から生前に多額の贈与を受けていた相続人がいた場合、そのまま法定相続分に基づいて遺産分割を行うのは不公平です。しかしここで弁護士が介入することにより公平な相続分配が可能となるのです。

メリット5 他の相続人と話す必要がない

相続前に相続人同士の関係が険悪な場合、相続人同士が顔を合わせると感情的になってしまい冷静な話し合いができないケースがあります。このような場合弁護士が代理人となることで、他の相続人と直接会うことなく自分の意思を伝え相続に関する話し合いを行えるため、相続人同士の争いを回避することができます。

まとめ

遺産相続がきっかけとなり家族間で心のしこりを残すようなトラブルはできるだけ避けたいものです。いざ被相続人が亡くなった際、穏便に事を進めるためにも早めに弁護士へ相談したり、遺産の全体像を把握するようにしたり、遺言書を作成してもらうなどトラブル発生を防ぐための対策を講じるとよいでしょう。相続人全員が納得した相続を実現できることを陰ながら応援しています。

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