新型コロナ渦の世界の住宅事情

 新型コロナは世界中の住宅市場に大きな変化をもたらしています。今月は中国、ドイツ、アメリカの賃貸住宅に関連するニュースをご紹介いたします。

【中国】マイホーム神話崩壊!住宅にこだわりを持たない新世代

 中国では、賃貸住宅よりもホテル暮らしを選ぶ若者が、都市部を中心に増えているようです。ベッドとユニットバスと最小限の家具・家電という間取りのホテルなら、賃貸住宅よりも2割近く安く借りることができるそうです。生活のほとんどをスマホで済ませる90後世代(1990年以降に生まれた中国国民)は、コストパフォーマンスにシビアで、浪費や無駄を好まず、社会的な成功よりも身近な幸福を望む傾向が強いといわれていて、このホテル暮らしもファッション性より、最小費用で快適をという実利を追求することの表れかもしれません。

中国の都心部では古くから、マイホームとマイカーは男性の結婚道具として所有していることが当たり前とされる文化があります。ですがコロナ渦による失業などの影響から、多くの会社員達が、住宅ローンの不払いから不動産を手放すケースが散見されています。今後の中国の若者の動向によっては、マイホーム神話は崩れ去る古き文化となってしまうかもしれません。このようなマイホームやマンションの所有欲の変化は、隣国である私達日本でも同様に見られており、外出を制限する風潮から売上を落とす、ホテル業界などは、長期利用者向けに部屋を貸し出す方針を打ち出すなど、住宅に関する考え方に変調の兆しが見えてきています。

【ドイツ】10年で家賃2倍。部屋探しも一苦労な住宅事情とは︖

 ドイツの首都ベルリンでは大手企業による賃貸住宅の買い占めが問題になっています。

そのためベルリンや都心部の家賃は高騰し、新たに住居を探してもなかなか見つからない現状にあります。ドイツは人口に対して、決して住宅の数が不足しているわけではありません。新聞に掲載されている住宅情報やインターネットを駆使して、何十件と連絡をしても内見に漕ぎつけられるのは数件という現実です。昨今では動画で住宅見学を行えるサービスを提供する不動産業者も増加傾向にありますが、都心部の住宅競争率はしばらくは下がることはなさそうです。ドイツでは、

1989年のベルリンの壁崩壊以降、公営住宅が民間に払い下げられ、大手企業の保有比率が高まったことで、家賃の値上げなどが市民生活を圧迫するといった弊害が問題視されるようになってきました。住民の不満は高まり、3000戸以上の物件を持つ不動産会社から市が物件を買い取り、公共住宅として適正な家賃で貸し出すよう求める運動が起きました。民間企業の財産を自治体が一律で買い取るとは常識外の要求に思えますが、昨年、この案が住民投票にかけられ賛成多数で可決されました。一方で、実際に自治体による一律買い取りが可能かというと、売価や法律上の問題があって簡単には進みそうにありません。しかしながら、住民の真剣さの前には自治体も何らかの対応をせざるを得ないと報じられています。

 

【米国】コロナ渦の支援打ち切りでホームレス急増

 州によっては空室率が10%前後あるという米国では、コロナ禍による家賃滞納問題が一部で深刻化しています。ワシントン・ポストが伝えるところによると、コロナ対策で作られた、政府による家賃の支払い困難者への家賃補助制度や、州による立ち退き猶予政策などが、2021年末から今年初めにかけて終了した影響で、滞納者の立ち退き業務が急増しているようです。日本と違い、米国の賃貸住宅では滞納者の時間的な猶予はなく、裁判所の命令によって、武装した警官が家賃が支払えない借主を排除するそうです(州によっても対応が異なりますが)。ワシントン・ポストの記事では、20年間で2万人もの人を立ち退かせた警官が紹介されています。一方で日本では、家賃を滞納しても居座ろうとする借主を立ち退かせるのは米国ほど簡単ではありません。滞納者が頑なに立ち退き交渉に応じない場合は、3ヶ月以上の滞納事実とともに、裁判や強制執行などの手続きが必要となります。日本の借地借家法は世界でも最高レベルで借主権利を保護するもので、それによる貸主側の苦労は多大です。ドライなアメリカの制度をうらやむ大家さんも多いのではないでしょうか。

 しかし米国式の容赦なさは、不況の度に大量のホームレスを生み出し、治安の悪化や貧困の連鎖で中長期的に地域の不動産市場にも悪影響を与えることを指摘する声もあります。

 

日本の治安の良さの裏側には、家賃不払いの入居者に対しても人道的に、そして柔軟な姿勢を見せる日本人オーナーの性質によるものもあるのではないでしょうか?

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